
にんにく卵黄というとサプリメントを想像する方が多いと思いますが、元祖は粉末だったり、粒状に固めたものだったんです。
その歴史は古く、江戸時代にはすでに存在していたと言われています。
にんにく卵黄は、いつどこで生まれたのか?
また、なぜ「にんにく+卵黄」の組み合わせになったのか?
歴史を紐解くと、先人たちの知恵が凝縮された食品であり、科学的にも理にかなったものであることが良く分かります。

にんにく卵黄の歴史と発祥の地
にんにく卵黄の起源をたどると、江戸時代後期から明治時代ころから続く、南九州地方(鹿児島県や宮崎県あたり)の各家庭で手作りされていた滋養食だったのです。
各家庭でレシピは異なるものの、基本的には「にんにく」と「卵黄」だけで作るシンプルなもの。
完成品は、粉末状のものや、固めて丸薬状にしたものが一般的です。
この地域の特産であったにんにくは、滋養強壮効果とひきかえに、強烈なニオイが悩みの種で、それを軽減するために卵黄を混ぜて水分を飛ばす方法を編み出したのでしょう。
実は、にんにくのニオイ成分であるアリシンは、卵黄に含まれるタンパク質と結合しやすい性質があるので、にんにくと卵黄を混ぜてニオイを消すことは非常に理にかなっています。

昔のにんにく卵黄は保存食・携帯食としても最適
また、にんにく卵黄は乾燥させて作るので、保存がききます。
一説によると、薩摩藩の人たちは江戸に向かう参勤交代や、木曽三川(岐阜県)の宝暦治水工事に、にんにく卵黄を持参し、スタミナをつけて挑んだとも言われています。
江戸時代の法令で、全国の各藩藩主が1年おきに自国と江戸に住む制度。入れ替え時は、徒歩で行ったり来たりするわけで、費用と体力が必要でした。・宝暦治水工事とは
濃尾平野を流れる木曽三川(木曽川、揖斐川、長良川)流域は大雨のたびに水害が起こるので、江戸幕府は宝暦3年(1753年)、薩摩藩に治水工事を命じました。この地に縁もゆかりもない薩摩藩に命じたのは、財政を悪化させる目的もあったと言われています。
今でこそ鶏卵は気軽に購入できるものですが、昭和前期くらいまでは超高級品。
きっと当時の人たちは、庭先で飼っていたニワトリの卵を使って、にんにく卵黄を大事に食べていたことでしょう。
時代が進むにつれ、にんにく卵黄は消滅の危機に
こうして、各家庭で作られてきたにんにく卵黄。
レシピは親から子へ引き継がれていくわけですが、昭和に入り、核家族化などを背景に、だんだんとその伝統が消えていってしまいます。
しかも、にんにく卵黄を作る時には、にんにくと卵黄を混ぜる時や水分を飛ばすために火にかける時、何時間もかき混ぜ続けないといけません。
この手間のかかりようも、だんだんとすたれていった理由かもしれません。
1990年代 サプリメントになって再び脚光を浴びる
にんにく卵黄の存在がどんどん忘れられていく中、サプリメントにしたものが登場しました。
平成に入って間もなくのころ、にんにく卵黄発祥の地である九州地方で、「こんなに素晴らしい健康食品を全国の人にも知ってほしい」と、誰でも飲みやすく、手に入れやすい価格でサプリメントとして大々的に発売が始まりました。
するとその実感力の高さゆえ、瞬く間に人気と知名度が上がります。
あの有名な「やずや」や「健康家族」も、九州に本社を置き、当時からにんにく卵黄サプリメントを販売している会社です。
20年以上たった今もなお、にんにく卵黄が知名度の高いサプリメントとして生き残っていることが、その実力を物語っていますね。
なぜにんにくと卵黄を混ぜたのか?
にんにくは1000年以上の昔から日本で食されていたので、初めてにんにく卵黄を作った人たちも、科学的な知識はなくとも、にんにくには体感的に元気になる栄養が入っていることが分かっていたのでしょう。
でも、あの強烈なニオイがあるので、食べる際には、加熱して幾分ニオイを和らげていたのだと思います。
それでもなお完全にニオイを消し去ることはできません。
そこでさらに工夫したのが「卵黄」を混ぜて加熱すること。
卵黄を混ぜることでにんにくのニオイ成分【アリシン】と卵黄のタンパク質が結合し、さらにとろ火でじっくり煎り上げることで結合がさらに強固になります。
こうしてニオイがさらに軽減されるのです。
卵黄も元気を作る貴重な栄養源として認識されていたでしょうから、疲労回復のために食べようとしていたにんにくにプラスするにはちょうど良い食材だったのでしょう。
関連記事にんにく卵黄が疲労回復に良い理由は↓
にんにく+卵黄の組み合わせは科学的に見ても◎
にんにく+卵黄の組み合わせは、当時としては経験的に編み出されたレシピなわけですが、今、科学的に見ても大変理にかなった組み合わせと言えます。
ビタミンB1は体のエネルギーを作る「糖代謝」の際に必要になる栄養素ですが、すぐに体外へ排出されてしまう性質があり、毎日摂取する必要があります。
江戸時代に流行した脚気(かっけ)はビタミンB1欠乏症なのです。
にんにくのニオイ成分【アリシン】は、ビタミンB1と結合することで【アリチアミン】という成分に変化します。
この【アリチアミン】は、ビタミンB1と同じ働きをしながらも、効率よく体に吸収される性質があるため、エネルギー産生効率が良くなり、疲労回復に良いのです。
にんにく卵黄には、にんにくの【アリシン】と、卵黄の【ビタミンB1】が含まれていますので、滋養食として最高の組み合わせというわけです。
また、にんにくのニオイ成分【アリシン】が、卵黄のレシチンなどの脂質と結合すると、ビタミンEと同じ働きをする【脂質アリシン】に変化します。
この【脂質アリシン】には、抗酸化(抗老化)作用や血液サラサラ作用、悪玉コレステロール除去作用などがあります。

にんにく卵黄の歴史 まとめ
江戸時代から続くにんにく卵黄の歴史。
そこには、昔の人のニオイを封じ込める知恵と、にんにくと卵黄という滋養食品を保存性・携帯性のある形に仕上げる工夫がありました。
今でこそ科学的にその成分が分析されて、ますます有用性が証明されたわけですが、昔の人たちは、にんにく卵黄のすばらしさを体感的に知っていたのでしょう。
今はにんにく卵黄がサプリになっているので、本当に便利な時代になりました。
苦労と知恵の結晶「にんにく卵黄」をサプリでありがたく飲ませていただくとしましょう!
この記事を読んだ人はこちらも読んでいます



